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2018.11.15  品川グローリアチャペル教会ライブ「Holy Piano Night」

  •  WRITER : admin
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    18-11-25 02:00  

2018.11.15  品川グローリアチャペル教会ライブ「Holy Piano Night」

 

 

まずはこのライブをするに至る経緯から。
20年ほど前からロンドンでオーケストラレコーディングをするようになり、芳醇な響きとそのサウンドに魅了され、
どうしてその地域によってここまで響き方が違うのだろうと大きな関心を持ち始めた。もちろんスタジオが良いなど多くの理由があるけど、何よりも密度の濃い、深淵なサウンドの虜になってしまった。

 

ロンドンでの初レコーディングは1998年ソロアルバム2枚目の「Into The Light」で、ロンドン・フィルハーモニーオーケストと、場所はあのアビーロード・スタジオ「2」。特に2スタはクラシックのみならず、ロック&ポップスで多くの名盤を生み出した伝説のスタジオ。そのレコーディングでアビーロードの深いサウンドの虜になり、今でも定期的にロンドンでのレコーディングを行うまでになった。レコーディング後、どうしてこういうサウンドになるのかなぁと思いを巡らし、週末のロンドンを歩いていたら、たまたま大きな教会で合唱コンサートをやっており、フラっと立ち寄ったらこれがブッ飛んだ。音楽のクオリティは高いは、その響きはまたもや素晴らしく、完全ノックアウト状態。^^;

 

ホテルに帰って知ったのだけど、その教会こそがあの大作曲家ホルストが音楽監督を務めるセントポール寺院だったのだ。これは単に自分が無知なだけだったんだけど、こういう偶然の出会いが自分の意識を大きく変えた。こういう響きだからこそ生まれる音楽があり、それが自分を優しく、深く包み込んでくれる心地よさ、安堵感。こういう場所で音楽がしたい、と思った。日本に戻り、かねてから親交の深かった東京リコーダーオーケストラとこういう場所でライブができないかと探していたところ、品川教会にたどり着いたという経緯なのです。

 

今回、夏の渋谷リビングルームカフェに始まり、来年2月の品川インターシティライブまでを一連の日本ツアーとしたわけだけど、その中にこの品川教会ライブをどうしても組み込みたかった。今回僕のツアー2018~2019は、同じプログラを無各地で続けていくといういわゆる「公演ツアー」とは正反対のコンセプトで、一回一回を全く違った趣向でやるというもの。ところがこの品川教会は素晴らしい会場なので、やはりミュージシャンオファーも殺到しており日程がなかなかつかめず、11月21日ソウルセジョン文化会館UTOPIA公演直前の日程になってしまったけれど、それでもどうしてもやりたかった。

 

今回の編成は親交の深かった東京リコーダーオーケストラに在籍していた音楽監督兼指揮者の金子健治さん、コンサートマスター安井敬さん始め、庄司祐子さん、早﨑靖典さんという強者揃いのリコーダーカルテット、旧友マルチパーカッションのクリストファー・ハーディ君、そしてゲストには、紛れもなく日本在籍二胡奏者No.1のジャー・パンファンさんというスペシャルな組み合わせ。19年前のコンサートから進化した、更に踏み込んだサウンドを目指したかった。

19年前、自分のソロ作品オーケストラパートを金子さんアシストの元、懸命にリコオケ用スコアとして書き込んだことが功を奏し、今回も当時のスコアを改良しつつリコーダーパートを作り込み、更にはカバーや僕が担当したアニメ英国恋物語「エマ」ではリコーダーを多用しているんだけど、それを金子さんがしっかり整理してくれて、アニメ作品やその他映像作品、多彩なプログラムを演奏できた。

 

 

カバー曲では澄んだ曲調にリコーダーの響きがマッチした沖縄の「涙そうそう」、リコーダーレパートリーのBluesやラテンアメリカの作品 Kalymboなど多彩な顔ぶれになったと思う。

 

 

 


 

そして旧友でもあり、尊敬する二胡奏者ジャー・パンファンさんは、二胡で心の琴線を言葉より流暢に、時に切なく、時に朗々と奏でてくれた。そしてアニメ「ファンタジックチルドレン」のエンディング曲として作り、CDではオリガが歌ってくれた「水のまどろみ」をジャーさんの二胡でやれたのは、個人的に感無量だった。パーカッションのクリスくんは本来のリズム打楽器に加え、音程のある様々な楽器;スティールパン、ハンマーダルシマーなどなどを自在に操り、更に彩りを添えてくれた。彼も本当に才能あふれるミュージシャンなのです。

 

 

 

アンコールは先程の経緯もあり、ホルストのJupiter。この曲をやる事にとても大きな意味があるようにも思えて、、、リコーダーの澄んだ響きとジャーさんの二胡が合わさっていく様は例えようがなく、どこか遠くで星が光っているような錯覚に。その後In Our Handsというとびきり明るい曲後半のソロ回しで、リコーダーカルテット必殺の「スーパーマリオ」が登場し、和やかさと楽しさがマックスに達して公演終了。

 

 

しかし皆さんの温かい拍手を聞いてうち、もう一曲弾きたくなってしまい、本当の締めくくりとして映画「アゲイン」のテーマを一人で弾いた。アゲインの公開日に他界したオリガ、先ごろ他界した高校球児だった友人、そして去る11月11日この世を去った母の姿が頭に浮かんだ。そういえばアンコールのJUPITERで見えた星は母だったのかもしれない、そして最後に弾いたアゲインは「もう一度母に、そしてみんなに感謝」ということだったのかもしれない。どうか安らかに、そしてありがとう。

 

素晴らしい時間を皆さんと一緒に過ごせた、忘れられないライブだったし、また必ずこの場所で皆さんとお会いしたいと切に思います。
来てくれた皆さん、参加ミュージシャンの皆さん、スタッフの皆さん、そして天に召された母上、本当にありがとう。

 

 

梁邦彦

 

2018.11.20 ソウル公演UTOPIAに向かう機中にて